「おい、宮田。おい。」

誰かが私を呼ぶ声がする。

「えっ。」

次の瞬間私がいた場所はいつもの教室だった。

「ケンタ!?」

私の前には須川健太がいた。

彼は私の………クラスメイトである。

「もうとっくに授業なんて終わってるぞ!いつまで寝てるんだよ。」

「寝てる?私が?」

私はこう見えてもまじめな方で、授業で寝たことは今まで一度もなかった。

「あぁ。お前にしちゃ珍しいから先生も驚いていたぜ。」

どうやら授業中に夢を見ていたようだった。

長くて何とも悲しい夢だった。


「おい、須川。早く見に行くぞ。」

ドアの所から柴田がケンタを呼んだ。

「おぉ。じゃあまた後でな。」

そう言ってケンタは教室を出ていった。

「えっ、ちょっとどこ行くのよ、ねぇ。」

私はさっきの悪い夢のこともありケンタのことが気になった。

「えっ、ちょ、あっ。」

その時だった。

バランスを崩した椅子は私と一緒に倒れた。

「痛った~。」

頭を摩った。

「大丈夫、朱里?」

理沙が私のところへやってきた。

「大丈夫、大丈夫。」

笑いながら答えた。

「珍しいね、睡眠学習といい椅子ごと倒れるといい。なんかあった?」

「何もないわよ。あっでも朝食の食パン、いつもは2枚のところ今日は1枚だった…」

理沙が笑ってくれたから良かったが、これは嘘である。

私はいつも朝はヨーグルトしか食べないのだ。

たまに嘘をつく。嫌なことがあった時、面倒なことを終わらせたい時によく使う。

「それより、男子達どこいったの?」

「多分…今日転校してくる女子を見に行ったんじゃないかしら。」

そんな話は聞いていなかった。

「えっ、いつ先生そんなこと言った?」

「覚えていないの?1か月前に言ってたじゃない。それで朱里、歓迎会やるんだって張り切ってたじゃない。」

全く記憶になかった。

「とっとにかく見に行ってみない?」

理沙を連れて教室を飛び出した。


ガン


何かにぶつかり倒れてしまった。

「宮田、いきなり飛び出したら危ないだろ!」

そこに立っているのは柴田達だった。

もちろんケンタも一緒だった。

おそらく転校生を見て帰ってきたところだろう。

立ちあがると「転校生どうだった?」と聞いてみた。

「がっかりだよ。もっと可愛子ちゃん期待してたんだけどな。なんか陰気くさい奴だったよ。」

柴田達はそういうと教室に入っていった。