この着信音はケンタ専用なので一発でケンタだとわかった。

しかし携帯に出なかった。

すると電話は留守番電話になった。

「朱里?どうしたんだ?風邪でも引いたのか?お前から電話してこないなんて珍しいよな。ちょっと心配だったからこっちから電話かけちゃったよ。明日また元気に学校で会おうぜ。」

こんな優しい言葉を掛けられたら全てを許してしまいそうだった。


恐る恐る携帯を手に取った。

「あれ?朱里?」

「ケンタ……」

全てをぶつけてみようと思った。

このままの状態であることが一番いやだったのだ。

「ねぇ今日私見ちゃったの。部活終わって一緒に下校してた女の人は誰なの?答えてよ、ケンタ。」

無意識のうちに涙が出てきていた。

「なんだ?それで電話してこなかったのか?」

ケンタは電話越しで笑っていた。

というより呆れていた。

「それくらいって何よ!浮気よ、浮気!」

「誤解だよ。あいつはバスケ部のマネージャーでさ。柴田のことが好きなんだってさ。だから柴田と仲の良い俺が相談を受けてたわけ……」

「えっ!?」

なんか拍子抜けしてしまった。

「だって仲良さそうに話してたから……」

「まぁなれなれしい奴だからそう見えたのかもな。」

「なんだ……」

ほっとした。

すると安心のせいか逆に涙があふれてきた。

「なんだじゃねぇーよ、馬鹿。俺今どこから電話してるかわかってるのか?お前からの電話が来ないから心配で今おまえん家の方に向かって歩いている所なんだぞ。」

「えっ?」

驚いた。



私はこんなにもケンタに愛されていたのである。

ケンタはこのあと私の家まで来ることなく、安心して家に引き返していった。