「ラブラブですねー」

ケンタと入れ替わりに理沙が来た。

「えっ……」

少し頬が赤くなったのを感じた。

「今日一緒に帰れなくなったんならさ、放課後手伝ってくれない?」

「うん、いいけど。」

「じゃあ3時半に図書室前に来てね。」

手伝いと言うのは何だろうか。

理沙は図書委員なのでそれ関係の仕事であろう。

しばらくして授業が始まったが教室の左端の席は一日中空席だった。



放課後になっても安藤さんは現れなかった。

昨日強く言いすぎてしまったのではないかと罪悪感にかられた。

しかし弱虫は嫌いであった。

あれくらいただの口げんかではないか。

そんなことで……。



安藤さんのことを気がかりに思いつつも図書室へ向かった。

「あっ朱里。来てくれたんだ!入って、入って。」

荷物を図書室の脇の棚に置いて中に入った。

図書室に来るのは久しぶりであった。

学校の端っこにあるため図書室の利用者は少なかった。

夕方の西日がいい感じに中央のテーブルを茜色に照らしていた。

「司書の前田さんに本の整理頼まれちゃって新書コーナーにあった本を陳列棚に戻さないといけないんだよね。だから手伝ってくれる?」

予想通りのことだった。

「うん。」

新書のテーブルにある本を手に取った。

本のラベルはAからHまでの分類と3桁の番号の組み合わせで分類されていた。

それを見て棚を探して並べるのだ。

「ねぇ朱里。今日安藤さんが来なかったこと気にしてたりする?」

唐突な質問だった。

答えられなかった。

「私もあの人のことは嫌いだよ。でもね、なんか理由がある気がするのよね。もともとは私たちと同じ女子高生なんじゃないかしら。」

「同じ女子高生……」

言われてみればそうだった。

不思議な子ではあったが何かしらの境遇が彼女をそう変えてしまったのかもしれなかった。