「よいしょ」
蓮に抱き抱えられて車をおりた
怖くて震えるあたしの手を
暖かい桃の手が握った。
「あ、俺。頼むわ。
あぁ、わりぃな」
「優歌ちゃん、どうぞ」
柔らかい笑顔でよばれる
少し安心した。
「横になってね」
「おれ、出た方がいい?」
「えぇ、また呼ぶからまってて」
蓮が病室をでてしまった。
この人……どこかで。
「覚えてるかな?小3の時に
ニューヨークに引っ越した
恵美だよっっ」
「あ、恵美ちゃん……」
よく、遊んでもらってたよね。
あたしより5つ年上の恵美ちゃん
きれいで優しくて憧れてた。
ほんとにお医者さんになったんだ
「こんな形で再会しちゃったね
でも、会えて嬉しいっ」
「ごめんなさい……ほんと」
「謝る必用ないよ!
それじゃ、診察始めよっか」
恵美ちゃんだとわかると
さっきまでの不安も消えて
静かに頷くことが出来た。

