その人に着いていって、到着したのは小さな薄汚い部屋だった。
ここはどこ?聞きたかったけど、声が出なかった。そういえば、さっきも声が出づらかったな。
それより、ここは市民体育館ではないはずだ。
だって、こんなところ見たことないから。
去年の中体連のときに、ものめずらしくて杏と二人ですみずみまで見学した。だからはっきり覚えてる。こんな部屋はなかった。
その場所を知る手がかりなんて一つもなくて、探そうとしても霧が邪魔して何も見えない。
ただの思い違いだと確信して部屋を後にした瞬間、あたしの手からはあのボールが消えていた。
振り返ったとき、霧のかかった薄暗い空間は消えて、明るい空気が部屋に舞い込んでいたのを見た。その光の中は、碧いボールを持ち去った。
ドアを閉めて、もう一度部屋に入ってみたら、そこは部屋でもなんでもなく、ドアの向こうに広がっていたのはただの倉庫だった。