「なっ、何してるんですかっ!?紫堂君の席は、あそこの席ですけど!」
慌てて教壇近くの一番前の席を指差したけれど、紫堂君は立ち上がる気配がない。
「誰も居ないんだったら、俺が座ったって問題ねぇだろ?」
それどころか、開き直った理論を展開されてしまった。
「でも、席替えじゃないのに勝手に席を変えるのは……」
「そんなの、構わねぇよ…。」
「だけど……」
なんとか、自分の席に戻ってもらおうと食い下がる私を、紫堂君は真っ直ぐ見つめた。
「俺は、柚の隣がいいんだよ。お前の傍に居たい。」
「えっ!?」
「そういうわけで、今日からここは俺の席だから。よろしくな、柚。」
ニヤリと紫堂君が笑みを零した瞬間、教室に居る生徒から、どよめきが起こった。


