蓮君の方にグイッと引き寄せられる。
ピタリと体が密着してしまった。
「蓮君、何してるのっ!?」
「何…って、見りゃ分かるだろ。俺の傍に引き寄せたんだよ。」
「こんなの近過ぎるっ!は、離してよ…。」
体を捩ったけれど、蓮君は離そうとしない。
「嫌だ。だいたい、柚が…あんな目で見つめるのが悪い。これでも俺、感情を抑えてやってるんだからな。」
それどころか、今の状況になったことが、まるで私のせいであるかのような言い方をされてしまった。
一体、私…どういう目をしていたんだろう…?
蓮君の表情は怒ってる…というよりも楽しそう。
不愉快にさせたわけじゃなさそうだし、それは良かったんだけど……。
私はキョロキョロと周りに視線を向けた。
公共の場所で、こんなに体が触れ合う距離で…。
は、恥ずかしいっ!!
行き交う人や、私たちの後ろに並んでいる人。
みんなの視線が私と蓮君に注がれている気がして、頬に熱が集まってくる。
早くお店に入りたいな…と切実に願いながら、私は顔を俯けた。


