「どうしたんだよ、早く並ばねぇと…どんどん後ろになってくだろ?」
「あ、あの…だいぶ待ちそうだし、どこか他のお店にしない?ほら、向こうの定食屋さんだったら、すぐに食べれそうだよ?」
私は混雑していない様子の定食屋さんを指差した。
「でも、ここで食べたかったんだよな…?」
「そうなんだけど、蓮君にまで長時間並んで待ってもらうのは、なんだか申し訳ないから……」
「………。」
長蛇の列を見ながら、少し沈黙した蓮君。
定食屋さんの方に移動するかな……と思ったけれど、私を連れてカフェの最後尾へと並んでしまった。
「れ、蓮君!?」
「別に、待つことなんてどうってことねぇ。俺に気を遣うな。」
「だけど……」
そこまで言ったところで、蓮君は私の唇に人差し指をあてた。
「柚が傍に居るから、待ち時間なんて気にならねぇよ。こういう時間も…二人で会話を楽しめるし、悪くねぇじゃん。」
フワッと緩んだ表情。
笑みを零しながら私の頭を撫でる蓮君に、ドキリと心臓が波打った。


