一方、リタ達はレザンドニウム領国から南に八キロ行った所にある、港町≪ヌータス≫の喫茶店で、ケーキを食べている。


「ねぇ、リタ」


「何だい?」


「お父様やジオ様には、ちゃんと手紙を送ったの?」


「うん、昨日ね」


(そうか……。リタもヨゼフも昨日、一族宛てに手紙を送ったんだ。私も今日、ゼネラ族長宛てに送ろう。レザンドニウムを脱出することができたから、いつかは火龍族の町に寄って、一泊するつもりです、てね)


ナンシーは、奴隷として魔道族に誘拐される前のことや両親を殺されたこと、仲間達と離ればなれになったことを振り返りながら、族長との再会を果たしたいという気持ちで胸がいっぱいになるのだった。


「どうしたの、ナンシー?」


「あ……何でもない。大丈夫よ、ヨゼフ」


二人の会話に、リタが入ってきた。


彼女は、今後のことについてヨゼフとナンシーに話そうとした。


その時、二羽の伝書鳩が手紙を運んでくるのが、彼女達の視界に入った。


「なんて早い……」


「まあ、ガルドラの伝書鳩は素早く手紙を運ぶように、特別な訓練を受けてるらしいからね」


リタとヨゼフは、期待に胸を膨らませながら、伝書鳩が口にくわえている手紙を受け取る。


(良かった……。まだ父上もジオも生きてるんだ。しかし、これは絶対にツーリアン大臣に代筆させた物だな。ジオだったら、丁寧な字で書類を書いてるからわかるよ)


リタは王国からの手紙を読み、安堵の表情を浮かべた。


彼女が読んだ手紙と、ヨゼフが読んだ手紙の内容は、以下の通りだ。