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「ランディー陛下!」


フィブラス砂漠にある、砂龍王家の城。――


この城の中で、いつもより大きな声で王の名を叫ぶ魔族がいた。


リタの乳母であり、砂龍王の部下の一人でもあるジオだった。


「これ、落ち着きなさい、ジオ。一体、何があったというのだ?」


「あなた宛てにお手紙が来ています。それも、リタ殿下直筆の物です」


「何? リタから?」


ランディー王は目を丸くした。


彼の想像ではリタ姫は九年前にキアに誘拐され、レザンドニウム領国で亡くなったものだと、思っていたからだ。


彼はジオから手紙を受け取り、読んでみた。


その文字は、確かにリタの物だった。


『親愛なる父上へ――


レザンドニウムの領主キアの襲撃を受けて九年が経ちましたが、お元気ですか?


私は砂龍族から引き離され、奴隷として一生暮らすのかと思いました。


が、水龍族のヨゼフ、火龍族のナンシーが励ましてくれたおかげで、キアが操る奇怪な魔物に勝つことができました。


今はレザンドニウムを脱出して、彼らと一緒に砂漠を目指して冒険しています。


――あなたの娘、リタより


追伸 再会した暁にはパーティを開き、一晩中踊り、一緒に喜びを分かち合いましょう。


お返事、お待ちしております』


ランディー王は手紙を読み終えると、大臣に代筆を頼んだ。