火龍族の里スクルド町は、先程三人が船を降りた所から、五十メートル歩いた先にある。


(家に帰ったら、両親の遺骨を埋めるために、墓地に行かなくちゃ。ゼネラ族長にお会いするのは、その後よ)


ナンシーは、今後の計画を立てた。


数秒後、三人はスクルド町に着いた。


町に着くと、火龍族の男児や女児が十人ずつ集まり、ナンシーを出迎える。


彼らにも、レザンドニウムの領主の呪術によって変えられたナンシーの姿が、判別できるようだ。


「お帰り、ナンシー姉ちゃん」


女児達の挨拶に、彼女はにっこりと笑って、「ただいま」と返す。


「でも、ごめんね。今回は用事を済ませに、この町に戻ったの」


彼女は、申し訳なさそうに言った。


男児達は、寂しそうな顔をしている。


「もう少し、この町にいてよ。僕達も、砂龍のお姉ちゃんや水龍のお兄ちゃんと遊びたいのに」


十人いる男児の一人が、だだをこねる。


そこへ、立派な角を生やした、火龍族の男性が現れた。


彼の服装は水色の長袖の上着で、極めて清潔である。


リタにとっては、自分の父親であるランディー王を彷彿させる姿だ。


「そんなに我が儘を言っては、駄目だぞ」


男性はまるで、子供達の父親のような口調で言った。


次に彼は、リタ達の方を向く。


「ナンシー、手紙は読んだ。この二人と一緒に、神殿を冒険するために、この町に戻ったのだな?」


「はい、ゼネラ族長。九年ぶりに、ゆっくりとお話ししたいところですが……。リタの父親から、彼女を守るようにと言われたので」


「リタ? 砂龍よ、あなたがあの≪砂龍族の王女リタ姫≫か?」


族長は、まっすぐリタの目を見て言った。


彼女は顔を赤くしながら、「はい、そうですが……」と答えた。


彼女はなぜ、自分の身分を知っているのかということを、ゼネラ族長に訪ねる。


族長はこれを見てくれたらわかる、と言いたげに左の腋に挟んでいた新聞を取り、広げてリタ達に見せる。