ガルドラ龍神伝―闇龍編―

(今日のリタはおかしい。普段なら、あまり深刻に考えないで行動するタイプなのに……)


ヨゼフは、リタを睨むように見た。


水龍神の神殿というだけあって、壁や床は青色で、所々に貝殻が貼られている。


三人の通り道の両側には、水が流れている。


その水は、最終的に≪水龍神の間≫と呼ばれる場所に流れ着く。


だが、今彼女達が歩いている水路から神の間までは、三十メートルくらいの距離がある。


しかもその途中で、古代文字が彫られた石盤に遭遇した。


「なんで、こんな所に石盤があるの? まるで、砂龍城の地下神殿ね」


ナンシーは、半ば面倒くさそうに言った。


「まあ、神殿とはこんなもんだと思うよ。ヨゼフ、古代文字を解読してくれる?」


「もちろん、解読するよ。これくらいの行数、僕にとっては朝飯前さ」


そう言うとヨゼフは、新品のリュックからノートと鉛筆を取り出し、古代文字を訳し始める。


そして訳し終わると、ノートを他の二人に見せる。


実際に石盤が示している内容は、以下の通りである。


『砂龍の娘、爪を持ちて扉の前に立ち、呪文を唱えよ。さすれば、水龍神への道は開かん』


(≪砂龍の娘≫、か……。まるで、私が≪砂龍神の爪≫を持って、この神殿に来ることを予測してたかのような内容だね)


リタは、これは単なる偶然じゃないな、と思いながら呪文を唱える。


それは、彼女自身が奴隷生活を送っていた間に、実際に使っていた砂属性の魔法の呪文である。


(あの姿の時は、≪ヒャッカンタフ≫すら碌に使えなかった。今はどうだろう?)


リタは不安になった。


が、彼女が思っていたよりも、爪は上手に魔力を制御し、≪ヒャッカンタフ≫という名の魔法が、見事に発動した。


これにより、石盤状の扉は重そうな音を立てて開いた。


「リタ、今の呪文は?」


「≪ヒャッカンタフ≫さ。本来なら、固い壁や岩などを切断する時に使う魔法だけどね」


リタは、「ちなみに、私が最初に覚えたものさ」と付け加えた。