ガルドラ龍神伝―闇龍編―

「プリシラ、召使いの人達は?」



「お帰り、母さん。召使い達なら、母さんの命令通りに、屋敷の中を掃除してるわよ」



プリシラは、半ば可愛らしげに答えた。



「あまり良いタイミングではないけど、今日は二人のお客様が家に泊まるの。一人は、砂龍族のリタさん。もう一人は、火龍族のナンシーさんよ」


プリシラは、少し顎を開ける。


「≪砂龍族のリタさん≫って……。もしかして、フィブラスの現砂龍王の娘、リタ姫?」


「あれ? 私のこと、知ってるの?」


自分の本当の身分を、既に相手は知っているらしく、リタは顔を赤らめる。


「さあ、玄関にいつまでも立っているのも何ですから、中に入って下さい」


ラノア族長は、一旦話を切るように言った。


族長の注意通り、リタ達は置物に触れないように歩く。


彼女達が案内されたのは、プリシラの寝室だった。



族長が彼女達に娘の世話を頼んだのは、娘自身がまだ幼い子供だからだ。



ナンシーは部屋に入ると、真ん中のベッドに横になる。



それをリタが注意する。



「駄目だよ、ナンシー。いくら一泊できるからって、馴れ馴れしく振る舞うのは。ここは、水龍族族長の屋敷なんだよ」



「ああ、そうだったわね。今日の私は、相当疲れてるのね。ごめんね、プリシラ」



「ううん、良いの。気にしないで」



二人の少女達のやり取りを見ていて、リタは呆れた。


彼女達が寝室に入って五分後、ラノア族長の召使いの一人である男性が来た。


彼は、リタを呼ぶ。


「私? 何の用ですか?」


「ヨゼフ君から、お電話が入っています」


「ヨゼフから? どんな用件だろう?」


リタは半ば好奇心旺盛で、階段の近くにある電話の受話器を取る。


「もしもし、ヨゼフ? どうしたの?」


『リタ。気になったことが三つあって、電話したんだけど……。良いかな?』


「うん……。別に構わないけど」


リタは動揺した。


いつも生意気なことばかり言っているヨゼフが、この時になって、真面目になっているからだ。