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「やっと、城内に戻れたよ。早く王様への報告を済ませ、美味しい物を食べたいよ」


そう言いながらヨゼフは、背筋を伸ばす。


神殿内を冒険し、リタは砂龍神から砂龍戦士に選ばれた。


(次に帰って来れるのは、キアとの戦いの準備の時か。今日はしっかり食べないと)


リタは九年ぶりに帰省したのだから、もう二、三日砂漠で過ごしたいと思った。


が、明日から他の龍戦士達を捜すため、ここを出発しなければならない。


けじめをつけ、彼女達は謁見の間へと向かう。


「ディフレン、見張りお疲れ様。父上と話をするから、通してくれる?」


「了解しました。くれぐれも、下手な発言はしないで下さいね、殿下」


そう言うと、門番のディフレンは謁見の間にリタ達を入れた。


その部屋には砂龍王ランディーはもちろん、爺やのギルスや近衛兵セルセインもいる。


「爺や……」


「リタ殿下、九年ぶりですね。そのご様子ですと、随分やつれましたね?」


「ああ。長い間、キアが放った≪闇の大蜘蛛≫と戦わされたからね」


ギルスとの話を打ち切り、リタは本題に移る。


「ただいま神殿から戻りました」


「うむ。どうやら、砂龍神デュラックはお前を、新たな砂龍戦士に選んだようだな」


「はい。その件ですが……」


リタは、言葉を整理して話を続ける。


「明日から、私はこの二人と一緒に旅に出ようと思います。詳しいことは、今日のパーティで発表します」


娘が旅立ちについての話を切り出したということを把握した王は、頷いた。


「わかった。お前がそう決めたのなら、城のことは気にせず、旅に出るが良い」


決して上手に励ましているとは言えないけれど、父親とは大体こういうものなのだ、とリタは悟る以外になかった。


「では、私達はこれで失礼します」


リタ達は一礼して、謁見の間を出る。


その足で、リタの部屋へと向かう。


火系魔道師が去った後、セルセインが新しい部屋の位置を教えてくれたので、そこに向かう。


「それじゃあ、僕達は先にパーティ会場に行くからね」


「わかった。私はドレスに着替えるよ。人前で、奴隷服姿を見せられないからね」


リタは愉快な発言をした。


三人は手を振り、別々に行動する。


(帰省祝いに、食事や踊りか。お姫様らしいというか、可愛らしいというか)


ナンシーは、今回のリタの案や行動に、関心を持った。


久々にまともな食事ができる、と思ったのだろう。


二人は謁見の間の扉の前を通り、パーティ会場に向かう。


夕焼けの空が、フィブラス砂漠に広がる青色の砂を、紫色に染めようとしている。