「セルセイン、むやみに攻撃魔法を使ってはいけませんよ。自分の体力を、大幅に削るだけですから」


「ですが、ジオ様。殿下をお守りするには、これしか方法がないのです」


「そのようなことをすれば、憎しみが増えるだけだ。ここは私に任せろ」


ジオという女性の後から、リタの父親、砂龍王ランディーが城の外に出た。


キア領主はやや動揺したが、なんとかいつもの冷静さを取り戻し、ランディー王に言った。


「おやおや。砂龍王直々にお出迎えとは、どういう風の吹き回しかな?」


「どうとでも言え。お前達が何を要求したいにしろ、国民達に手出しすることは絶対に許さない。無論、うちの一人娘にもな」


王は、緑色の目でキアをまっすぐ見つめ、反論した。


が、彼の言葉に対し、キアは冷ややかに笑った。


というより、彼ははなから勝利を確信しているかのように笑っている。


彼は続けて言う。


「ほう。だが、その一人娘を盾にとられても、同じことが言えるかな?」


キアは余裕綽々な物言いだった。


突如彼は、王達の目の前から姿を消した。


と同時に、セルセインが背負っている幼女が空中に浮いた。


彼女の体はまるで、操り人形のように軽く持ち上げられ、魔道族の輪の中に行った。


幼い王女を人質に取られ、一般の砂龍達はただおろおろするばかりだった。


「! お前達は、何を企んでいるのだ? リタをどうする気だ?」


「我々魔道族の目的は、この幼い王女を我が領国の奴隷とすることだ。他の一族への見せしめのためにな」


そう言ってキアは、そのままリタをガルドラの最北端≪レザンドニウム≫へ連れて行ってしまう。


後に残ったのは、砂龍王と兵士達、国民達、そして青く広がる砂漠のみだった。――