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「リタ殿下、ランディー陛下に許可を取らなくても良かったのですか?」


ジオは訪ねた。


リタは鍵をポーチから取り出しながら、答えた。


「何言ってるの? 父上が反対するなら、わざわざ私達に鍵を探すのを手伝えって、言わないだろう? それに私は、どんな困難にぶつかろうとも逃げないと決めてる」


リタの言葉を聞き、ジオは安心した。


その言葉の中に、父親から受け継いだ勇気と気高さが込められている、と感じたからだ。


(殿下……。皮肉にも、闇系魔道師の奴隷として生活したのを機に、頼もしくなりましたね)


ジオが涙目になって、三人を見送る。


大袈裟な仕種だなぁ、と思いながらリタは地下神殿の扉の鍵を開けた。


「じゃあ、行ってくるよ。ジオ、父上には『心配しないでくれ』って伝えてね」


「御意」


乳母に見送られ、リタ達は地下神殿に入る。


目的はもちろん、砂龍神デュラックに会うためだ。――


「暗いな。懐中電灯を持ってないか? ヨゼフ、ナンシー」


リタの質問に答えるように、ナンシーは手提げ鞄から、赤色の本体の懐中電灯を取り出す。


が、その懐中電灯が電池切れだったので、彼女は予め用意しておいた単三電池を交換した。


「ごめん。電池が切れてたみたい」


ナンシーは大袈裟な仕種をして謝り、懐中電灯をつける。


それをそのまま、リタに渡した。


神殿内には数多くの仕掛けが施されていて、簡単に進むことはできないだろう、と三人は思った。


(この神殿、罠や仕掛けが多すぎる。デュラックは砂龍族の王子だったという説があるから、おそらく彼の父親だった初代砂龍王の用心深さのせいだと思うが)


リタは砂龍神の歴史を想像しながら、辺りを見回している。


そしてようやく、三人は神殿内を進み始めた。


四十メートル近くまで歩くと、そこは行き止まりだった。


「リタ。本当に、ここで合ってるの?」


リタに訪ねたのはナンシーだった。


彼女は返答に困る。