ガルドラ龍神伝―闇龍編―

そう言うとキアは咳き込み、その場に倒れた。


彼の呼吸は速まり、息も絶え絶えだ。


(間違いない。アルエスには、あらゆる命を吸い取る能力がある。


あいつはそれを利用してキアの体に取り憑き、九年間に渡って彼の命を吸い取ってた)


どうりで優しいはずの領主の態度が急変して、冷酷な考えが芽生えていたはずだ、ともリタは思った。


闇龍アルエスの魂らしき靄が牙をむき始めた頃、先に役目を終えたアイルが五人の所に来た。


「こ……これは、何が起こってるんです?」


アイルは現状を把握できずに、混乱するばかりだった。


「わからない。


でも、このままだと、キアが死んでしまう。


アイル、君の力を貸してくれ」


急にリタに指示を出され、アイルは首を傾げる。


だが、すぐに自分が何をすれば良いのか、彼は理解することができた。


彼は黒みのかかった紫色の靄に狙いを定め、セイント・ウェポンの鎖を引っ掛ける。


鎖で靄を縛ると、彼はそのまま、それを引っ張り上げた。


六人は慌てて、元に戻った領主の所に駆け寄る。


「お父様、しっかりして下さい」


メアリーはキアに囁きかけながら、金の髪飾りを外し、額の汗を拭き取る。


キアは娘の声に反応して、囁くように語りかける。


「メアリー……。私のことは良い。


闇龍を……アルエスを葬るのだ……。


奴を野放しにすれば、必ず良くないことが起きる……」


そう言うと、キアは気絶した。


その時の彼は、ほとんど息をしていなかった。


紫色の靄は物凄い速さでリタ達の間を縫うように駆けていき、やがて彼女達の目の前で姿を現す。


闇のように黒い体に、ごつごつとした鱗。


その鱗は、怒りと憎悪に満ちているかのように、逆立っている。


靄が姿を現した頃、残りの龍戦士全員がリタ達の所に集まった。


「待たせてすまない。


ちょっと、いらない時間を食ってしまった」


「ヒア、あなた達は、一番最悪な時に戻ってきてしまったみたいだね」


そう言うとリタは、靄の中から出てきた黒い龍の方を指差した。


「まさか……」


「そう、そのまさかさ」


リタの代わりに、黒い龍が答えた。