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魔道族のキア領主の正体に関して、大体の見当がついてきた。


だが、それはまだ定かではない。


真実を探るため、リタ達は北端の領国レザンドニウムに向かって、フィブラス王国を後にした。


船の中で、龍戦士達の隊長及び副隊長を決める話し合いがおこなわれている。


隊長は誰がするか、あるいは副隊長は誰がするかなどを言っている一方で、臨時なのだからそういうことは今決めるべきではないという意見が、龍戦士達の間で持ち上がっている。


そんななか、先に龍戦士隊結成案を出した風龍戦士ビオラが、口を開く。


「あたしは隊長はリタ、副隊長はヨゼフがすれば良いと思うわ。


リタはフィブラスの王女ながら正義感と責任感に溢れてるし、ヨゼフは常に彼女を支えてるじゃない?


そういう所を見込んで、あたしは二人をルインの隊長と副隊長に推薦したいんだけど?」


ビオラはリタとヨゼフの日頃の行いから、二人を候補にあげた。


彼女の意見には、二人にも頷ける部分が多々ある。


だが、いくら正義感と責任感があるからといって、隊長や副隊長はそう簡単に務まるものではない、とリタは思った。


これには、ヨゼフも戸惑っている。


僕なんかに、十人の龍戦士達の副隊長が務まるのか?


僕はちゃらんぽらんで、ずぼらな所がある。


人をからかい、自分がチビと言われればすぐに怒ってしまう。


こんな僕が、副隊長になっても良いのか?


ヨゼフは深刻そうな顔をして、考え事に浸る。


それをヒアが、上手に説明した。


「リタ、ヨゼフ、そんなに深く考えることはないよ。


これはあくまでも案だし。


正直言うと、俺もビオラの意見に賛成かな?


ヨゼフには、誰にも譲れないほどの勇気と知恵がある。


リタには、誰にも譲れないほどの強い正義感と責任感がある。


それと、勇気もね」


「……」


ヒアの言っていることに納得しているのか、二人は首を縦に振る。


ようやく決心がついたのか、リタとヨゼフは口を開く。


「わかった。だけどさっきも言ったけど、臨時でするだけだよ」


「そうそう。本来、僕は魔族達を纏めることには向かないんだからな」


ヨゼフは半ば謙遜するように言った。


臨時ではあるものの、龍戦士隊ルインの隊長と副隊長が決まった。


これにより、ビオラの意見が通ったことになる。