ヨゼフは手鏡に映った自分の後頭部を見て、驚きの声を上げた。


「わあ。ありがとう、ナンシー」


「しっ! 大きな声を出さないで。


みんなが起きるでしょう?」


ナンシーは、ヨゼフの声の大きすぎを制止した。


彼女に言われるまでもなく、他の龍戦士達は皆、起きている。


少女達は着替えを済ませたり、自分の鬣を結ったりした。


ヨゼフ以外の少年達は、着替えを済ませ、顔を洗った。


「全員揃ったな。


じゃあ、リタと合流して、朝食にしようじゃないか」


そう言ってヨゼフは、寝室の扉を開ける。


しばらく廊下を進むと、そこにはいつも通りのしっかりした顔つきのリタがいた。


「やあ、みんな。


今日は作戦会議だから、気を引き締めていこうね」


リタは大張り切りで、食卓に向かう。


それを見て、ヨゼフとナンシーを始め、他の龍戦士達も安心した。


(良かった。あれでこそ、リタよ)


ナンシーは思った。


昨日のことを忘れたように、城にいる魔族全員が食卓に着いた。


食卓には、仙人掌の天ぷらや極普通のステーキなど、豪華な食べ物が並べられている。


(これ、どうやって食べれば良いのかな?


砂龍族の人々は、こんなのよく平気で食べられるな。


それほど、牙や顎が丈夫な証拠でもあるけどね)


はじめて見る天ぷらを、ペレデイスは不思議そうに口にする。


だが、彼が思っているほど、その仙人掌は固くはなく、むしろ柔らかかった。


食欲旺盛なところを見て、ランディー王は微笑む。


(食欲が旺盛なのは、良いことだ。


特に昨日は私が毒を盛られたばかりに、リタ達の腹を空かせてしまった。


これで、少しは償いになれば良いが)


ランディー王は昨日のことが忘れられないのか、フラッシュバックになっていた。


十人の龍戦士が食事を終え、食卓を後にする。


彼女達は、リタの部屋に向かう。


その部屋には、リタの乳母ジオや近衛兵セルセイン、そして執務大臣ツーリアンがいた。


「リタ殿下に代わり、私があなた方に礼を申し上げます。


昨日はランディー陛下を助けて頂き、誠にありがとうございました」


大臣が深々とお辞儀をして、九人の龍戦士達に礼を言った。