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息切れを起こしながらも、三人はランディー王の寝室まで走る。


リタは、門番達に薬仙人掌を手に入れたと報告した。


門番に扉を開けてもらい、三人は寝室に入る。


彼女達が帰るまでに、ランディー王の容態が急変することがなかったかのように、部屋にいる魔族達は皆、落ち着いた表情をしている。


待ちくたびれたという顔をして、医師が薬仙人掌を求める。


リタはバッグから薬仙人掌を取り出し、医師に渡した。


「殿下、よく頑張りましたね。


これは確かに、薬仙人掌です。


早速、解毒剤を作ります。


少々、お待ち下さい」


薬仙人掌が本物であることを確認した医師は、解毒剤を作るため、城の台所に向かった。


それから数分後、薬を作り終えた医師が、王の寝室に戻ってきた。


だが、部屋中に、異常なまでに臭い匂いが戦士達や兵士達の鼻を刺す。


(く、臭い。鼻が痛い。


でも、これも王様の命を救うためだ。


我慢しよう)


ヨゼフを始め、城にいる魔族全員が鼻を押さえつつも、涙目になっている。


医師が薬仙人掌の成分から作った解毒剤を注射器に入れたり、ランディー王の左手首付近をゴムで絞めたりして、投薬の準備をした。


手首付近を消毒し、注射器の空気を抜き、いよいよ王の体に解毒剤が投与される。


それから一分経った頃、薬が効いたのか、王が目を覚ました。


それを見たリタ達の顔は、涙で溢れた。


「リタか……。


兵士達やお前だけでなく、他の龍族の民にも心配をかけてしまうとは。


私も、まだまだだな」


目を覚まして早々、ランディー王は半ば意地を張るように言った。


(リタ、ヨゼフ、ナンシー。


お前達の勇気ある行動のおかげで、助かった。


本当に、感謝するぞ)


言葉にはしなかったが、ランディー王は微笑み、リタ達に感謝した。


その時、寝室の前から二人分の漏れた。


「トルード侯爵にルトワンヌ姫様。


わざわざログテル砂漠からお越し頂き、誠にありがとうございます。


陛下も、お喜びになられるでしょう」


門番の一人が、二人の魔族が寝室に入るのを許可する。