「謁見の間です。出入り口から右に行って、左に曲がり、そのまま真っ直ぐ行って、その右側の部屋です」


「わかった。ありがとう、セルセイン」


リタはセルセインに、新築砂龍城の道案内をしてくれた礼を言うと、ランディー王が待つ謁見の間へと向かう。


だが後から、ヨゼフとナンシーが彼女を両側から挟むように、ついて来た。


「これは私達父娘だけの話し合いだ。君達は、外でジオやセルセインと待っててくれないか?」


「まあまあ。そんなこと言うなよ、リタ。水臭いじゃないか」


「そうよ。それにもしも今の姿について王様に聞かれて、あなたが戸惑った時に、代わりに上手に説明できる魔族がいなくちゃ駄目でしょ?」


「ヨゼフ……ナンシー……」


「ついでに、あの伝説だか神話だかわからない物の真偽も、確かめないとね」


三人が話し合っている間に、ランディー王が待つ謁見の間に着いた。


リタは、扉の前で番をしている男性に話しかけている。


「ディフレン、九年ぶりだね。覚えてるか? リタだけど……」


彼女がそう言った時、ディフレンという男性は混乱した。


彼はリタが幼い頃の写真と、彼女の今の姿とを、交互に見る。


(リタ殿下? なんか九年前と顔が違うような……。いや、疑っている訳ではないが)


ディフレンの行動に、リタは首を傾げる。


「どうしたの? さっきから、私のことを観察してるような眼差しだけど」


ディフレンは慌てて写真を隠し、リタに言う。


「ははは、大丈夫です。もちろん、あなたのことは覚えていますよ」


「そうだよね(本当かな? なんか怪しいけど)。父上と話があるから、通してくれないかい?」


ディフレンはリタの命令に従い、扉を開ける。


その扉の向こう側の玉座に、ランディー王が座っている。


リタ達は兵隊の行進のような歩き方で真っ直ぐ進み、片膝をついた。


(この砂龍が、リタのお父様……。なんか、頑固そうな感じの魔族だね)


ナンシーは見た目だけで、ランディー王を勝手に頑固と決めつけていた。


三人の胸の中は、緊張感でいっぱいだった。


「九年ぶりに戻って参りました、父上」


「うむ。先程ディフレンと話している声を聞いたが、男口調だけは九年前と変わらないようだな」


砂龍王はナンシーの想像とは違った、穏やかな口調でリタに言う。


(リタの男口調は、元からだったんだ。僕はてっきり、奴隷部屋で自然にあんな口調になったのかと思ったよ)


ヨゼフは不思議そうに、リタの横顔を見る。