1


十属性の龍神達の恩恵や加護を受けて成り立っている魔界、≪ガルドラ≫。


この魔界の住人の約九割は十属性の龍魔族ばかりで、キアを始めとする魔道族が住んでいるのは、北端の領国≪レザンドニウム≫だけだ。


それはさておき――


三人は砂龍族の王ランディーに、≪ガルドラ龍神伝≫という名の神話の真偽や龍神に姿を変えたそれぞれの一族の代表者達の、闇龍アルエスとの関連性を教えてもらうため、一度リタの故郷フィブラス砂漠に来ていた。


「ふぅ……。久々に、フィブラスに帰ってきたよ」


リタは、胸いっぱいに故郷の空気を吸う。


その時、彼女の乳母ジオが出迎えに来た。


「殿下ー! リタ殿下ー!」


ジオは魔道師達の呪いによって顔を変えられたリタを見ながら、涙を流す。


それに対してリタは笑顔で、


「ただいま。九年ぶりだね」


と言った。


ジオは涙を抑えながら、返事をする。


「お帰りなさいませ、リタ殿下。そしてようこそお越し下さいました、ヨゼフ殿、ナンシー殿。私共々、手紙が届いた時からお待ちしておりました」


「リタ、この砂龍は?」


「あ、ごめんごめん。紹介が遅れたね。こちらはジオ。私の乳母さ」


「え? この魔族が、奴隷部屋でいつもあんたが言ってた、“ジオ”って魔族?」


「そうだよ」


リタ達が明るい表情で話し合っている時、城の出入り口から、誰かの足音が聞こえた。


その足音は、近衛兵のセルセインのものだった。


「やあ、セルセイン。九年ぶりだね。元気だったかい?」


「ええ、もちろんですとも。ところで殿下、ランディー陛下が『話がある』と仰っていましたが……」


「わかった。今から行く。父上は、どこにいる?」