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タハナビ島にある風龍族の里、ランデス村で一夜を沸かしたリタ達は、彼女達を泊めてくれたエアロビ族長とその娘のビオラ、そして風龍族の民全員に見送られて、島を出る。


この島の一番南に停まる船に乗り、三人は次の島に向かう。


船はタハナビ島よりも南東にある、≪ファナンディス島≫という所に目的地を定めた。


そこは、華龍族の里の他には、魔道族の出身の人々が暮らしている町が点々とあるだけの、小さな島である。


地図には、華龍族の里のことを≪マライテス町≫と書き記してある。


マライテス。――


それは、≪魔界の花園≫の異名がつくほど、可愛らしい花や綺麗な花が咲き乱れる町。


この魔界の中では、最も美しい町といえよう。


「リタ……。ねぇ、リタってば!」


リタは、うるさいくらいによく響くヨゼフの声で、目を覚ます。


彼女は、地図で場所を確認する途中で、すっかり寝てしまったのだ。


「あ、私としたことが、つい寝てしまった」


「全く……。


それでもフィブラス王女で、砂龍戦士と呼ばれる魔族か?」


ヨゼフは怒り口調で、リタを追い詰めるように言った。


それを、ナンシーが注意した。


「ヨゼフ! そんなことを言ったら、リタが傷つくわよ。


それに、彼女を追い詰める原因にもなるわ」


ナンシーの説得により、ヨゼフは一先ず落ち着いたようだ。


「次の島では、西側に位置する ≪マライテス町≫での冒険が終わり次第、次の船に乗る。


それで良いね?」


一刻も早くキアの秘密を探り、魔道族の陰謀を阻止したいというリタの気持ちが伝わったのか、他の二人は頷いた。


リタが冒険の予定を定めると同時に、船長が島への到着が間近だということを告げた。