「大体あんたって魔族は、いつもいつも下級のくせに、キア様に逆らうような真似をして、勝手なことばかり。恥ずかしいったら……。とりあえず、キア様の命令で、あんたを連れ戻しに来たの。本来ならあの小娘達を始末するのは私の役目だったはずなのに、あんたが勝手に自分の役目だと勘違いして、こんな雑魚な鮫まで呼んで……。さあ、早く領国に帰って、キア様にたっぷりとお仕置きして頂かなくっちゃね」


メアリーの半ば脅迫めいた言葉――いや、脅迫という程度ではなく、むしろこれがキア一味の魔道師にとっては当然の仕打ちなのだという意味も含め、彼女はわざと厳しく言っている。


このことは、リゲリオンにも痛い程伝わっていた。


が、伝わっているからこそ、余計にメアリーのことを“小癪な氷系魔道師”と決めつけ、“絶対に認めない”という気持ちで、彼の胸はいっぱいになる一方だとも言える。


結局、水系魔道師リゲリオンは双子の姉の氷系魔道師メアリーに、レザンドニウム領国まで連れて行かれた(最も、リゲリオンが素直に従って、という訳ではないが)。


(突然のメアリーの登場によって、私達も周囲の魔族達も命拾いした。が、いつもいつも、今のようになるとは限らないだろう)


リタはベッドに横になり、ずっと考え事をしていた。


そのことを考えていたのは、他の二人も同じである。


(早くフィブラスに帰らなきゃ。王国に帰って、キア一味の魔道師達が陰謀を企てているということを、仲間達に知らせないと。とにかくこれはもう、砂龍族や他二つの種族だけの問題じゃないんだ)


(リタ宛ての手紙に書いてあった、≪ガルドラ龍神伝≫って、一体何なのかしら? その伝説にある、≪闇龍アルエス≫と龍神に姿を変えた、それぞれの一族の代表者達の戦いは本当なのかしら? どっちにしろ、調べる必要があるわね)


レザンドニウム領国と≪闇龍アルエス≫との関係について疑問を抱きながら、三人は明日からの船旅に備えて、睡眠をとった。