ガルドラ龍神伝―闇龍編―

鋭い目つきと怖い形相で他者を見つめるリタを、ナンシーは初めて見た。


リタは改めて、少年に向き直る。


彼女は少年に訪ねる。


「アイル、君は私達に何の恨みがある?」


リタは仮ではあるけれど、少年のことをアイルと呼ぶ。


すると、彼はリタの声に反応しているかのように、首を横に振り、「そんなことは考えてない」と答えた。


だが、アイルの態度に対し、リタは尚も怒る。


「考えてるとか、考えてないとかの問題じゃない!


魔族を殺すことは罪だ。


そんなの、公子が――未来の大公がすることじゃない!」


リタの怒声は、神殿中に響き渡る。


それを見ていたナンシーもメアリーも、震えが止まらなかった。


それほどに、リタの怒りは凄まじいのだ。


突然、アイルの様子が変わった。


「アイル……。僕の……僕の名前……。うああああぁぁぁ!」


彼は急に叫びだし、その声はリタの怒声と同じく、神殿中にこだまする。


その叫び声があまりにも酷いので、彼女達は思わず耳を塞ぐ。


一度叫ぶとアイルは、両膝をついて脂汗をかき、そのまま倒れた。


その時、リタの右腕に巻きついていた鎖は、自然と緩んでいた。


彼女は、それをゆっくりとほどく。


「メアリー、私が斧を使う間もなく、決着が着いたようね」


ナンシーは始めから、手を出さなかった。


それは、メアリーのことを想ってのことだった。


「メアリー、あなたはもしかして、本当は始めから私達と戦う気はなかったんじゃないの?」


ナンシーに訪ねられ、メアリーは戸惑う。


(そうよ、ナンシー。


あなたの言う通り、私は始めから戦おうとは思ってなかったの。


でも、キア様――私のお父様の命令には背けない。


例え氷龍族の公子を利用してでも、砂龍王女であるリタを抹殺しなければいけない。


そう命令されたから……)