(ああ……。また、この夢か。もう、この夢は見たくない……)


ここは、ゼテロイド系第一魔界≪ガルドラ≫。


別名≪龍の魔界≫とも呼ばれている。


その異名通り、ここには砂・水・火・葉・氷・岩・風・華・雷・金といった十属性の龍達が、住人の九割を占めている。


その龍達は≪龍魔族≫と呼ばれ、フィブラス砂漠に住む砂龍族を始め、様々な一族がそれぞれの村や街や森等に言語、宗教、習慣等共通の文化や住まいを持ち、王や族長に従いながら九年間平和に暮らしていた。


が、突如、≪魔道族≫という魔道師の一族の様子が変わった。


彼らは通常、ガルドラの北端の領国≪レザンドニウム≫に住み、龍魔族達を襲うことも一切なく、むしろ長い間龍魔族達と共存して暮らしていた一族である。


だが、その一族がまるで狂ったように水龍族、火龍族、葉龍族の少年少女を各一人ずつ捕え、彼らの奴隷とした。


そして、彼らは魔界の西北に位置する≪フィブラス砂漠≫の砂龍王の城にも、魔の手を伸ばしていく。


「陛下、大変です。レザンドニウム領国の領主が、こちらに向かっている模様です」


砂龍王に忠実な女性の近衛兵が、危険を察知して、国王に報告した。


それを聞いた国王は、しばらく考えた。


(レザンドニウム領国の領主……。キアめ、この私に何を要求するつもりなのだ。どっちにしろ、リタや国民達を守らなくては)


既に三種族の龍魔族達が捕まっていることに不安を感じた国王は、国民達と自分の一人娘を避難させるよう、女性近衛兵に命じた。