料亭から出たところで、不意に昴さんが立ち止まる。 「?」 不思議に思って顔を上げると、その先に人が2人立っていた。 チラと昴さんを見れば、その表情が、少し強張っている。 「…………あの、」 声をかけようとしたところで、彼がハッと我に返って。 「悪い。……向こうから行こう」 「え?」 車はすぐそこだというのに、彼は踵を返して歩き始めようとする。 「あ、あの、でも……」 驚いて、それでも後に続こうと背を向けた時。 「昴くん?」 やけに、響く声ではっきりと。彼の名前を呼ぶ声がした。