「何……は?今日? ……ああ」 誰だろう、と思うまでもない。 「分かった」 初めて笹本さんバージョンの編集長を見た時と同じだ。相手は多分、女の人。 いつもより少し低めの声で、けだるい感じで話す。 感じ悪い印象もあるけど、何だかんだで優しい。 ……瞬間、その話し方はどこか色気があるものに感じられて。 「はいはい。8時ね。じゃ切る」 編集長は余韻も残さず通話を切って、自販機の前に立った。 「モテますね」 「まーな」 否定しないんだ。