「選べ」

編集長がチャリン、とお金を入れて、私に促す。


「えっ、いや、申し訳ないです」

昨日の缶コーヒーも結局渡せず終いだし。


首を振っても編集長は譲らずで、

「気にすんな。缶くらいで」


さらりとそんな事を言ってのける。

……そういえば、飲み会の時とかも編集長奢ったり、かなり多めに出したりしてくれるんだよね。

そういうのも、笹本さんがモテる秘訣かな?


「えっと……ありがとう、ございます」


「どーいたしまして」


ココアを選んだ私の後で、編集長も缶を買おうと手を伸ばす。

――♪

不意に、携帯の音が鳴り響いた。
私じゃない。

「……あー」

編集長はディスプレイを確認すると、私に軽く手を挙げて隅に移動する。