豹変上司に初恋中。

瞬間。

「へー。じゃ、俺にも口止めすんだな」

低い、苛立ったような声が響いた。


「!? うわっ」

私を押さえ付けてた男が、突然いなくなる。


「お前さ。この俺の職場で何やってんの?」

「ひっ……」

男の胸倉を掴んで、にっこりと笑っているのは、編集長ではない。


「さ、さもとさん」

昨日と同じようにスーツを完璧に着こなす、「笹本さん」で。


「ん、正解。ちょっと待ってろ」

そのまま微笑んで、くしゃっと私の髪を掻き混ぜてから男を連れて部屋を出ていく。


その後、悲鳴のような声が響いた。