豹変上司に初恋中。


「今日一日ですか?」

「違う。暫くずっと」



つまり。



……同棲?

いきなりの提案に、明らかに挙動不審になる私。

そんな私に、昴さんは思い出したように言った。


「……そうだ。まだ理由も話してなかったな」

「え?」

「『あの女』の事」


言われて、今度は心臓が鈍い音を立てた。

その人は、昴さんにとって決して良い人ではない。


「ただ、あの女に関しては俺自身あまり知られたくない過去もあってな」

そういいながら、昴さんは本がたくさん並べられている棚に向かっていく。


それから一冊の本を取り出して。

「聞いて幻滅したら、逃げていい。」


そういう昴さんは、時折見せる自嘲の笑みを浮かべている。
悲しげで、寂しそうな顔。

逃げるはずがないのに。私は首を振って、昴さんの傍に寄った。