私の視線の先で、昴さんは何か詰まったような表情をして。


やれやれと息を吐いた。


「……ただ、一つだけ。俺の前以外で酒は飲むな。良いな?」

まだ、あと少しで唇が触れ合うという距離で、昴さんが囁いた。


私は小さく頷く。

それに「良い子だ」と呟いて、昴さんはもう一度キスをくれた。



そのまま何回かキスをした後、昴さんがふと何か思ったみたいに動きを止める。


「ー……華織」

昨日の記憶が妄想じゃなかった。

改めて呼ばれた自分の名前に、嬉しさがこみあげてくる。


私は昴さんの顔を見上げて、「はい」と返事をした。


「昨日の事は覚えてるんだな?」

昨日の事、つまりお酒が入ってる時の事?


私は思い出して恥ずかしくなりながらも、頷いた。


その応えに昴さんは小さく微笑んで。

すぐに、真剣な顔をした。