「……帰ったんじゃなかったのか」 「はい」 私は目を伏せたまま、返事だけする。 鼓動は早鐘のように鳴っていた。 そんな私をよそに、昴さんは一拍おいて、 「今、きたのか?」 と尋ねる。 「はい」 「…そうか」 私の答えに、昴さんはいくらか安心したみたいだった。 顔を上げて、昴さんの顔を見て。 優しい顔に、私はまた泣きたくなった。 「お腹、すいて。戻ってきました」 隠すようについた咄嗟の嘘に、昴さんは苦笑する。