豹変上司に初恋中。


それから何分か、私はぼんやりと突っ立っていた。

手は、まだ強く結んだまま。

中から聞こえる声は、少し明るい口調になっていた。


まだ、私の頭ではごちゃごちゃ考えていて。結局答えは出てこない。

……もうやめた。


「では、戻ります」

佳代さんが丁度そう言った瞬間、私は目の前のふすまを滑らせた。

「……え」

昴さんと佳代さんの驚いたような声が聞こえる。

佳代さんと目を合わせて会釈すると、佳代さんは一瞬ちら、と昴さんを見て、私に弱く微笑んで出て行った。

私は俯いたまま、昴さんの向かいに座る。