「理由は単純だよ。知られてしまった、それだけ」 「……何を?」 駄目だ。今日は帰った方がいいかもしれない。 私は一歩下がって、その場を離れようと向きを変えた。 けれど。 「俺が、呉羽を好きなことに」 そんな言葉が耳に届いた。 ……聞き間違いか、幻聴か。 咄嗟に、くれは、という名前の人を知る限りで思い返してみた。 本当に私の名前? あるいは、見知らぬ誰か? もう、完全に思考が回らなくなってしまっていた。 「昴さん、--」 まだ向こうでは、話が続いている。