「心配しなくても取って食うわけじゃねーよ。お前には興味ねーし」
「失礼な。って、そういう事じゃ……あ!」
そこでようやく、私が会社に引き返した理由を思い出した。
「け、携帯!」
結局、取ってきてないし……。
がっかりして息を吐き出すと、編集長はふと思い出したようにポケットから何かを取り出した。
「これか」
ズイと前に差し出されたのは……
「私の携帯! な、なんで編集長が」
「机の上あったから。
明日の朝礼で話すけど、今日編集部内で盗難事件が報告されててな。女性のヤツが2、3件。」
「え!」
全然知らなかった。
被害にあった子、内密にしてたのかな。


