恥ずかしさで俯く私を他所に、男の人は受付さんに頼み込んだ。

「悪いけど、笹本昴を呼んで来てくれませんか? 仕事に目処が付いてからで良いので、とお伝えください……『笹本 樹』って名前出したら来ると思いますから」


「か、かしこまりました…! では、そちらの応接室でお待ちください」

……笹本、いつき。

名前を聞いて確信する。



この人、昴さんのお兄さんだ。



私は呆然と、受付さんが受付席付近にいた警備員さんに席を立つ事を告げてエレベーターに向かうのを見送る。

……私、どうすれば。

と思った瞬間、男の人が私の腕をとった。

「え。」

「君、昴の所で働いてるんだよね? 少し話、聞かせてくれませんか?」

「ええ!?」

返事をするよりも早く、男の人は私もろとも応接室に入った。