「い、いえ」 実際、私は何もしてないんだけど…… 「お前、飯食ったか」 「え? いえ、まだ」 「よし。礼に奢ってやる」 「え……うわ!」 いきなり腕を取られて、なすがままに連れていかれる。 たどり着いた先は、 「ん。乗れ」 会社から少し離れた場所にある駐車場。まだ新品みたいなベンツが鎮座していた。 「え、えええ……」 なんですか、これ。 「遠慮しておきます」 「何かあんの?」 「や、ないんですけど」 やっぱりいつもの編集長らしくないからか、警戒してしまう。