その声の後、その人は淡い光となって
私の体内に溶け込んでいく優しいイメージが
脳内に広がる。


吸い込まれた後パチーンっと、
弾けとんだような光が体が広がって
ほのかに温もりが流れ込んでくる。


そんな光に包まれた私の体のなかへと
その光は吸い込まれていった。



「ねぇ?何したの?」


『大丈夫。
 私の声は届かなくてもは私は貴女と一緒にいるから……。

 舞の願いは私の願い。
 今度こそ、舞は未来を切り開いて。

 貴女がもう悲しまなくていいように』



謎の言葉を残して、
音信不通となった舞と名乗った心の声。


その声は聞こえてしまったけど、
それでも私の心は、ほっこりとして温かかった。


湧き上がってくるビジョンは、
私自身をゆっくりと安定させていく。







【-記憶-】



『しんにい、よしにい。
 舞もつれてってよー』



まだ小さい私が二人の後を
追いかけていく。



「舞、そのままだとこけるぞ。
 お前はお転婆なんだから」

『舞、お転婆じゃないよ。
 ちゃんとお炊事だってお母さんの手伝いしてるもん。

 お味噌汁は舞も作れるようになったんだから』





初めて流れ込んでくる、
その映像を見つめながら私の中に広がっていく懐かしさ。





そう……これは故郷。
私は、いつも晋兄と義兄と一緒だった。

晋兄は村の大きなお家のお兄ちゃん。

村の皆は風変わりな坊ちゃんって言ってたけど
私にとっては……知らない世界を沢山教えてくれる
憧れのお兄ちゃん。


義兄は隣の家に住んでて、いつも泣いてた
私に声をかけてくれた優しい人。

何をするにも一緒に連れてってくれた。

砂浜を走るのも、山登りをするのも、
海を泳ぐのも。

上手く出来なくて、泣いたら、慌てて私の元まで
駆けつけてきて涙をふき取って一緒にしてくれた。



そんな義兄を見ながら晋兄は言ってたっけ。



『義助は、舞には甘すぎるんだよ。

 だから舞は何時まで経っても何も出来ない子供のままなんだ』って。

その度に「義兄を悪く言わないでっ!!」って何度も言い返してた。


そんな三人で過ごし続けた楽しい時間も、
いつかは別れの時間がやってくる。



晋兄は村を飛び出して何処かに消えてしまって、
義兄も結婚してすぐに、勉学の為って藩の許しを貰って村を出て行っちゃった。