ねぇ、貴女はどうして私に語りかけてくれるの?
義助さんと晋作さん。
二人についていく。
そう決めて、宿を飛び出して以来
ずっと私の中に語りかけてくれる声。
『舞、あっちに行っては駄目。
あれは薩摩。
そして……向こうは、会津。
義助たちの仲間ではないから……。
あの場所に行っては駄目』
そうやって私を守るように、
心の中に流れ込んでくる声。
貴女は誰?
そう問いかけた私に貴女は答える。
私自身が驚く中身を。
*
『私は……舞……。
貴女自身……』
*
嘘だと思った。
何言ってるのって、暴言を吐きたかった。
だけど……この世界の記憶がない私には、
どうすることも出来なくて。
だけど……この声を拒絶するには
この世界は寂しすぎて。
その声に縋る【すがる】ことしか出来なくて。
ねぇ、私は誰?
どうして……記憶がないの?
何故【なぜ】この場所に居るの?
あの日から問い続ける答えは今も届かない。
『ねぇ……舞……心細い?
記憶がないのは……不安?』
「そりゃそうよ。
記憶がないなんて地面に足がついてないんだもの。
不安すぎるよ」
突然の問いかけに私は心の中で答える。
『そう。
なら舞は私を抱けばいいよ。
私は舞。貴女自身だから』