ねぇ、貴女はどうして私に語りかけてくれるの?



義助さんと晋作さん。
二人についていく。


そう決めて、宿を飛び出して以来
ずっと私の中に語りかけてくれる声。



『舞、あっちに行っては駄目。

 あれは薩摩。
 そして……向こうは、会津。

 義助たちの仲間ではないから……。
 あの場所に行っては駄目』



そうやって私を守るように、
心の中に流れ込んでくる声。


貴女は誰?


そう問いかけた私に貴女は答える。
私自身が驚く中身を。




『私は……舞……。

 貴女自身……』







嘘だと思った。

何言ってるのって、暴言を吐きたかった。


だけど……この世界の記憶がない私には、
どうすることも出来なくて。


だけど……この声を拒絶するには
この世界は寂しすぎて。


その声に縋る【すがる】ことしか出来なくて。




ねぇ、私は誰?




どうして……記憶がないの?
何故【なぜ】この場所に居るの?



あの日から問い続ける答えは今も届かない。




『ねぇ……舞……心細い?
 記憶がないのは……不安?』



「そりゃそうよ。

 記憶がないなんて地面に足がついてないんだもの。
 不安すぎるよ」



突然の問いかけに私は心の中で答える。



『そう。
 なら舞は私を抱けばいいよ。

 私は舞。貴女自身だから』