「瑠花……。
 無理しなくていいんだよ。

 瑠花のことは私が守るから。
 
 瑠花だけでも、
 私が現在に帰して見せるから」




黙って私を抱き寄せる。




「……花桜……」



必死に涙を堪えて、
声にならない声で紡ぐ親友の名前。



「少し休んでおいでよ。
 皆には疲れて休んでるって伝えておくから。

 ほらっ、泣いたままで芹沢さんの前にいられないでしょ」


花桜に促されて八木邸の炊事場から、
前川邸の方へと移動していく。



その道すがら、
視線の隅に捉えたもの。




沖田さんとお梅さんの姿。




「瑠花はん?」



慌てて通り過ぎようとした私に、
気が付いたお梅さんが声をかける。


ヤバっ。


こんなところ見られたくなかったんだけどな……。



しかも……お梅さんと一緒にいるのは、
あの沖田総司。



大好きな総司のはずなのに今は……ただ怖い……。




彼の心が見えないから……。




「ほなっ、沖田はんも気をつけて」



お梅さんはそう話しかけると、
私の方へと近づいてきた。



「芹沢せんせは?」

「あっ……鴨ちゃんは相変わらず、
 お酒飲んでます。

 黙々と……」

「……そうかぁ……」


一度軽く目を伏せて視線を遠くにうつしながら
愛おしそうに紡ぐお梅さん。