……どうしよう……。


心細さが一気に支配していく。




『舞、大丈夫だよ。
 私はここに居るから。

 晋兄とは……会えなかったけど、
 あの日……私は義助には出逢えたから』




眠って起きたあとなのに、
その私をかき乱す声が脳裏から離れることはなかった。



静かに響くように浮かび上がる言葉。



その声を何度も耳にしているうちに
意識が麻痺しているのか、
先ほどまでの嫌悪感が少しずつ薄らいでいく。




「貴女は義助さんの居場所を知っているの?」


『うん。
 知ってる……。

 早く行かなきゃ……早く行かなきゃ、会えなくなる』




えっ?


早く行かなきゃ、逢えなくなるってどういうこと?


意識の声が聞こえるままに、私は身支度を済ませて、
宿を飛び出していく。



いつもは真っ暗な暗闇。
なのに今日だけは、何処か様子が違う。

街中のあちこちに、
松明と篝火が立てられている。


そして鎧兜を身に着けた人たちが、
あちらこちらに集結していた。




「あっ、あそこ。
 あの人に聞いたら……」



人を見つけて駆け出そうとした私を
中の声が制止させる。



『舞。

 あっちに行っては駄目よ。
 あれは薩摩。

 そして向こうは会津。

 義助たちの仲間ではないから……。
 あの場所に行っては駄目』




危険シグナルを告げるように
意識に流れ込んだ声は、
私の体の自由を奪っていく。