ふと脳裏に誰かの囁きが聞こえた。



その途端、私は頭痛を感じ
思わずその痛みに耐えるように両手で頭を押さえる。



「舞?」



慌てるように覗き込む義助さんにただ横に首を振って
目を閉じて呼吸を整えると、不思議にスーっと痛みがひいていく。


さっきまでの痛みが嘘だったみたいに。


「舞?どうしたの頭が痛いの?」


今も心配そうに私を見る、義助さんとその後ろから視線を感じる
晋兄の方をゆっくりと見つめて、私は言葉を返した。



「義助も晋兄も勝手ばっかり。
 そうやって、私を遠ざけて。

 私がその後、どれだけ大変だったかも知らないくせに……」



えっ?

私、何で泣いてるの?

何……言ってるの?


義助さんとも晋作さんとも、
まだ出逢って数か月しかたっていないって言うのに。



「おいっ。
 舞、大丈夫か?

 顔色、悪いぞ。

 義助、やっぱりコイツは
 宿とって休ませる」

「あぁ。
 晋作の言うとおりだ。
 
 こんな状態の君を連れて行くなんて出来ないよ」





『いやっ。


 こうやって義助も晋兄も私のことを仲間外れにするの。
 ずっと一緒にいるって言ったのに……。

 何時か……私をお嫁さんにしてくれるって
 約束してくれたのに』







えっ?



脳内をかき乱す声は次第に大きく響いていく。 





「いやっ。

 私の意識を支配しないで。
 私は……貴女なんて知らない」






知らないんだから。


叫びながら……途絶えた意識。

気がついた時には、誰もいない部屋で
布団の中に寝かされていた。


私以外の荷物は部屋の何処にもない。


義助さん?
晋作さん?


二人を探して宿の中を探し回る。



義助さんと、晋作さんはおろか
そのお仲間さんたちの姿も消えてしまってた。