「本当は……芹沢さんって
 呼ばないといけないのにね……」

「いやっ。
 瑠花の好きなように呼んでいいぞ。

 お前、最近食ってねぇんだろ。
 ただでさえ、食が細いのにしっかり食えよ。

 梅が粥作ったんだ。
 ほらよっ」


そう言いながら、粥を蓮華にすくって
私の口元へと運ぶ。


「おぉ、食えるじゃねぇか。
 ほらっ」


そう言いながら、鴨ちゃんは
次から次へと私の口元へ粥を運び続け、
食べ終えたのを見届けて静かに椀を置いた。



「瑠花、月ってのはどんなことなんだ?」



月には住んでないんだけど……。


そう心の中で突っ込みながらも
私は、私の世界の話を鴨ちゃんに話していく。



携帯電話のこと。

学校のこと。

カラオケのこと。

私の家族のこと。

大好きなファッションのこと。




そして鴨ちゃんたちの名前が
語り継がれていること。




私が話す言葉を鴨ちゃんは、
畳にゴロリと横になりながら楽しそうに聞いてた。



どうしてだろう。


この世界に来てから私はずっと鴨ちゃんに
救われてばかりだよ。





こんなにも守られているのに
鴨ちゃんの為に、私は何もしてあげられない。





「瑠花……俺はもうすぐ逝くのか……」




暫くの沈黙の後、
鴨ちゃんが重い口を開く。




そう……。



こんなにも優しい貴方は
もうすぐ……近藤さんを慕う、
土方さんたちの手によってその命を奪われる。




もう……隠せないよ。




その歴史が変わろうとも。





もう……歴史は変わってる。