近づいた途端に反射的に刀へと手を伸ばし、
無表情な冷徹オーラー全開になる沖田さん。


ったく、何もしなかったらモデルでも十分やっていける、
そんな気がするのに。



「瑠花をお願いします」



小さくすれ違いざま、
紡いだ言葉に沖田さんの動きが硬直する。


戸惑ったような表情を見せた後、
無言で、その場所から消えてしまった。




どっと疲れた体を
どうにか支えて、
八木邸の自室へと戻る。




いつものように、
午後の飲み物を振る舞い終えて
自室に引き込まり
大の字に体を広げて横になる。




「花桜、なんや。

 布団もきんと寝とったら風邪ひくで」


ウトウトと仕掛けた私に、
声がかけられる。


「山崎さん……」


慌てて飛び起きて眺めた私を、
笑いを堪えながらじっと見つめた。



「あの?
 山崎さん?」


「なんや、花桜。
 怒ってんのかっ。

 花桜のここんとこな、
 畳の後、くっきりとついてるで。

 布団も敷かんと大の字になって
 寝てるからやで。

 それとも確信犯で風邪でもひいて
 オレに同じ布団入ってほしかったんか?」




はい?


今、
何て言った?





山崎さん。




慌てて押入れの扉を一気に開くと、
一番近くにあった枕を掴み取って山崎さんへとぶん投げる。



「おぉ、怖っ。
 花桜ちゃん」


なんてわざとらしくいいながら、
軽く身を翻して枕攻撃をかわしていく。



掴む枕がなくなって、投げた枕の残骸だけが
散らばっているのを確認しながら肩で息を整えていく。



「そんなだけ元気やったら安心した。

 花桜、出掛けるで。
 舞ちゃん探しに行くんやろ」



山崎さんのその言葉に、
ウトウトしてしまった自分の顔に両手でバシーンと
気合を入れて、部屋を後にしていった。