粥は冷たく干からびていた。


その粥を啄みに空からおりてくる小鳥たち。

返事のないまま、
ドアをあけて部屋の中へと入り込む。

ずっと、この世界の着物に袖を通してた
瑠花は今日も聖フローシアの制服に身を包んだまま、
固まって動かない。


「瑠花っ、お願いだから。
 少しは食べてよ」


縋り付くように声をかけても、
瑠花の反応は今もない。


「ちゃんと食べてよ。
 三人で……三人で現代に帰るんだから。

 一緒に帰るんだから。

 私……諦めてないから。
 舞……探してくるよ」


瑠花の心に届いているのか、
届いていないのかもわからぬままに
その思いを伝えて、もう一人の親友の名前を出して
その重苦しい部屋を後にした。



瑠花はあの調子。



そして、せっかく再会できたはずの
舞もあの晩……瑠花を助けて帰ってきたら
姿を消していた。



瑠花の部屋を出て、
八木邸へと向かう庭園を歩いているとき、
ふと、視線を感じて周囲を見渡した。



その視線の主はすぐにわかった。


庭園内の物陰に潜めるように
身を隠して、瑠花の部屋へと眼差しを向け続ける。



その相手は意外なことに沖田総司。



発狂した瑠花に、労咳で死ぬとかなんとか、
宣告されてた相手がどうして?



心に疑問を感じながらも
沖田さんの方へと近づいていく。


沖田さんのその瞳に少し人らしい
表情が出ていた気がして。



いつもは無表情の彼が瑠花の部屋を見つめる視線が
何故か、優しい気がして。