「おいっ。

 兄貴、こいつ……上玉ですぜ」






不意に降ってきた声。



硬くなる体。



突然、抱え上げられた
体は視界を奪われ縄で手首を後ろ手に結ばれる。



なんで……っ。







なんで、私ばっかりこんな目に合うのよ。








私は……こんなところで、
こうやってとらわれるはずもない人間なんだよ。



この世界は私の世界じゃないんだから。


どれぼどに叫ぼうとも……
布を咥えさせられて声も発することが出来ない。




恐怖だけが襲い掛かり……
後悔が膨れ上がる。




私が、感情に任せてあんなことを
言わなきゃ……良かった。






ずっと秘めたままにして
前川邸から、勝手に出なければよかった。



鴨ちゃんが今日まで、
どれだけ守ってくれてたか……思い知った。





……馬鹿なことしちゃった……。





どれだけ足掻こうとしても、
全てを封じられた私は、
もう何も出来ず、ただこの後に来るものを
覚悟して待つしかなかった。






涙すら……出ないじゃん。






花桜ごめんね。
舞のこと頼んだよ。


私……もうあの世界に帰れない……。



心の中で静かに覚悟した時、
風の音が何かを断ち切るのを感じた。


生暖かい何かが視界を遮られた、
頬に触れる。






「瑠花っ!!」





聞こえた声は……花桜。