「馬鹿っ!!
 
 鴨ちゃん、アンタそんなんだから
 殺されちゃうんだよ。

 そこに居るアンタ。

 アンタだって労咳で死ぬの。

 鴨ちゃん殺すのアンタなんだもん。
 労咳で死んだって当然なんだから」



気が付いたら絶対に言っちゃいけないって思ってた
秘密を勢いに任せて吐き出していた。



涙を流しながら……。



涙を流しながら、
崩れ落ちた……私を花桜が
慌てて支えて包み込んでくれる。



そんな花桜の手を
払って前川邸を飛び出していく。


いつもは鴨ちゃんと一緒に歩く京の町。
だけど今は一人。


下だけ向いて、
ひたすら走り続ける町の中。




やがて雨が降り始める。




降り出した雨は、
私の体を容赦なく打ち付けていく。


もう……嫌だよ……。


鴨ちゃんが……殺されるのを知りながら
この世界に……居るなんて、私には絶えられないよ。


ねぇ……。

雨と雷が私をこの世界に連れてきた。



ならもう一度……
もう一度……扉を開いてよ。



私をこの世界から返して。




崩れ落ちた体をかろうじて支えて、
その指先で、ドロドロになった土を握りしめる。



雨なのか、涙なのか……涎なのか
全てが混ざってぐちゃくぢゃになったものが
地面へと吸い込まれていく。