慌てて姿勢を正して一礼すると
座って、ゆっくりと面を外す。






「花桜。

 強くなったな」






お祖父ちゃんの名前は、
山波 敬介【やまなみ けいすけ】。


そして私の師匠である、
お祖母さまの名前は、明里【あかり】さん。



そして一族の



歴史好きの親友、岩倉瑠花【いわくら るか】には、
新選組じゃあるまいしなんて、笑い話にされる名前。




だけど……私の一族が、
そんな歴史の人物と縁深い家柄だなんて
その時の私は知るはずもなく、
その日も朝稽古を終えた。




道場を退室していくお祖父ちゃんの後を追いかけるように
私も道場を後にする。


私の背後には、
同じようについてくる、

お爺ちゃんの後について、
私と敬里も道場を出ていく。




小鳥が囀る気持ちいい朝。




深く深呼吸して見上げた空は
何処までも青くて。




暫く、深呼吸をしながら
空を眺めつづけていたお祖父ちゃんが、
ゆっくりと私の方を向き直った。




慌てて、お祖父ちゃんの方を向いた私に
静かに告げた。
 




「決めたぞい。

 わしの息子、敬明【としあき】は論外。
 敬里では役不足じゃな。

 我が家に代々伝わる家宝の剣を
 私は花桜に託すことに決めたよ。

 ご先祖さまも……花桜ならば、
 許してくれるだろう。

 今、空を見上げながら
 話して決めた」




お祖父ちゃんは宣言すると、
そのまま、また道場の方へと向かい
丁寧に布にまかれた細い何かを私の前に差し出した。



ゆっくりと手を伸ばして、
差し出されたそれを受け取る。




受け取ったそれは、
ずっしりとした重さを秘めていて
ゆっくりと布を外していくと
真っ黒な鞘が姿を見せて、
その鞘の奥には銀色に輝く刃。







日本刀?








刃に吸い込まれるように
視線を移すと……それは模造等ではなくて真剣。