「バカっ。

 アンタが熱があるなんて言うから
 なんか、しんどくなっちゃったじゃん。

 明日も仕事あるのに動けなかったら
 どうしてくれんのよ」

「あぁ、なら平気だ。
 お前、 明日も絶対安静な。

 友達がお前のこと覚えてなかった
 精神的なもんもあるんだろうけどな、
 おまえの一番の原因過労な」


額を弾くデコピン一発。




「あぁ、山崎さんが病人に暴力振るう」

「ほらっ、とっとと休みな。
 希望ならオレが暖めてやろうか?」




冗談めかして言う
その言葉がなんだか……嬉しくて。



「ねぇ……山崎さん。

 舞……私のこと、
 思い出してくれるかな?」



思わず呟くその言葉。



舞が覚えていなくても
私と瑠花と舞は親友同士。



それは変わりないよ。
だけど……やっぱり悲しいよ。




「そうやなー。

 友達が記憶失う(うしのー)てしもたら悲しいな。

 戻ってきたらええな。
 舞ちゃんの記憶。

 泣きたいなら、おもっきり泣いたらええよ。

 オレが全部受けとめたる。
 だから……今日はゆっくり休みな」


呼吸に合わせるかのように
ゆっくりと紡がれた子守唄みたいなその声が
とても優しくて……その日……この場所に来て、
はじめて……大声で泣いた。



一度、決壊した涙はなかなか止まることを知らなくて
流れ続ける。



嗚咽しながら声をあげて泣く
私を……優しく抱きながら背中をさすりつづけてくれた。







……舞……。






舞が思い出してくれるのを信じてる。


だから朝が来て元気になったら零から始めるよ。


今の……舞とも仲良くなれるように。